「それってなんなの?」
「バイクのカタログだって」
袋のなかを京ちゃんに見せてみた。
「へー、こんなの女子は見ないよね~」
「ほんと。全部同じに見える」
悠君の話によると大沢さんは大のバイク好きで、長年バイクに乗っているにも関わらず一ヶ月ほど前に事故を起こして足を骨折。それで入院していたらしい。
特に思い入れもなくそのカタログをめくりながら、二人で大沢さんのリハビリ終わりをロビーで待っていた。
「あらっ、縦の糸ちゃん横の糸君は元気?」
「こんにちは、お久しぶりです」
師長さんが私に気づいてまんまるの笑顔を投げかけてくれた。
「それって沙羅と佐野君のこと?」
「うん、たぶんね」
確かにあのとき歌いながら師長さんお守り編んでたからそのイメージが強かったんだろうな。なんて自由で無邪気な人なんだろう。



