わたしのキャラメル王子様

「じゃあ、単刀直入に」



「うん」



大丈夫、覚悟はできてる。



「ちょっとあっちに戻るね」



「あっちって、ニューヨークの実家のほうだよね?」



「うん」



「それっていつ?」



「今度の日曜かな、沙羅ママが早く帰ってきてくれてよかった」



「今度の日曜って……それ3日後だよ?しあさってとも言うよね?」



「そうともいう」



開いた口が塞がらない。



「なんでそんなギリギリまで黙ってたの?大事なことなのに」



感情的にならないように気をつけていたつもりだったのに、思わず口調が強くなってしまった。



「怒るなって。はい、沙羅も手伝って?」



でも悠君はそれをさらりと受け流して、満面の笑顔で刺繍糸を山盛り渡してきた。



「大会には出られないけど、みんなのこと応援してるって伝えたくて」



「もっと早く言ってくれたらちゃんと手伝えたのに」



結局は私もあみあみ要員じゃん。膝を抱えて、泣きたい気持ちをこらえて編んだ。



「まさか半日眠りこけるなんて思わないじゃん」



「それはそうだけどさ」



「それに沙羅に話した時点でカウントダウンが始まって、それでギクシャクするのが嫌だったんだ。寂しい思いするのは最小限に留めたかった」




「それはそうだけど……」



覚悟を決める時間だって、できれば欲しかったんだ。



「でも寂しい思いさせることに変わりはないよね。ごめん」



謝られたら何も言えなくなっちゃうよ。