191号線を走り、しばらく海を眺める。ガソリンスタンド、小さな漁師町のような道路脇に住宅の密集した地域を抜けて、まだ先。白い小さな砂浜の見える海水浴場を通り過ぎ、郵便局をぬけて、幾多にあるカーブをぬけてすこし。信号を左折したら、あの人はいつも言った。「もう着くけ」。
小学校から坂道を登ると見えてくる景色。コバルトブルーの海が広がる。何度もここ道を通っても、この光景を目にするたびに歓喜の声をあげる私に、あの人は笑った。
此処があの人の育った場所。小さな町はいまは寂れて若者は少ないと彼は嘆いた。彼の通った小学校、中学校、近所のおじさんの家、あっちは死んだばあちゃんがちょっと住んでた場所、そんなことを話しながらいつも笑ってた。
「東京もええけど、こんな田舎もたまにはええやろ」
大きな橋を渡り始めると、流していたラジオを止めて、彼は嬉しそうに語る。


