けやき並木の通りを そぞろ歩きした。



テレビ局の前の交差点で立ち止まったとき、一人の女が目に入った。

赤レンガで作られた花壇の端に、ちょこんと腰掛けたその女はガムをかみながら携帯電話の画面を見つめていた。


俺の視線を感じたのか、女は顔をあげるとこちらのほうを見た。


「待ちぼうけかい?」

俺が声をかけると女は渋い顔をした。


「ほっといて・・・」


「君みたいな いい女を待たせるなんて、男の顔が見てみたいね」


「まったく、男って ほんと見る目ない」

女は そう言うと、チューインガムを風船のように膨らませた。



「よかったらどう?・・・振られた者同士、一杯飲まないか?」


「どうしようかなー」

女は品定めするかのように俺の顔を眺めた。

表情は、どことなく嬉しそうにも見えた。


パタン!


持っていた携帯電話を勢いよく閉じると、少し高い花壇の上から歩道へと跳び降りた。



「いいけど・・・一つだけ条件あるよ」

そう言って彼女は微笑んだ。



やれやれ、条件か



今度は、一体どんな条件だ?



俺は苦笑いをしながら彼女のことを見つめた。



【完】