心と心で つながりたいという互いの思いが重なったこともあって、俺は奈緒のことを運命の女だと思い込んでいた。

俺が幸せにしなければと思った。



広瀬が聞いたら、きっと笑うだろうな。



「倉田?」

俺が声をかけると、奈緒は目を覚ました。


「そろそろ帰るぞ」


「あ、はい。すみません」

彼女は自分が涙を流していたことに気づくと、バッグを持って化粧室へと向かった。


俺は、涙には気づかないふりをした。



エレベーターの中で彼女は、久しぶりに楽しいひと時だったと何度も礼を言った。


俺は、たまにはこういうデートをしようと彼女に約束した。


もちろん彼女の兄として。



奈緒に対する自分の気持ちに封をして、俺は彼女をタクシーに乗せ見送った。



秋の夜風が、ひんやりと身体を包みこむ。


急に、女の温もりが恋しくなった。


いつもの俺の悪い癖だ。



今からホテルに戻って、美加を誘うのも気が引けた。


さすがに、奈緒に振られたから美加・・・というわけにはいかない。