「さすがの稲垣誠も、アイツを抱くことだけは無理か。・・・ですよね。アイツは特別な女ですから」

石黒は脚を組むと、空を見上げた。


「彼女の事を知っているようだね」


「ええ、まあ。元カノですよ」


「すると、君も条件が飲めなかったクチか」


「飲めない?・・・フっ、冗談やめてくださいよ。あんな女、こっちから お断りですよ。稲垣さんだってそうでしょ? 抱けない女なんて何の価値も無い」

石黒は得意げに そう言った。



「彼女に同情は?」


「同情?・・・僕は、アイツの言うことなんか信じてませんよ。触られるのがダメな体質なんて聞いたこと無い。アイツは身体目当てに言い寄ってくる男を振って楽しんでるだけですよ」


「そうかな? 彼女、苦しんでたぞ」


「女なんて信用できませんよ。顔で泣いて心で笑う。何を考えているんだか。・・・ずるがしこい生き物ですよ。女ってやつは」


「その様子だと、相当痛い目にあったようだな」


「稲垣さんは? 女を信用できますか?」


「もちろん」


「ほんとかなぁ」