自宅に帰るのは着替えのためだ。


営業という仕事柄、身だしなみには気をつけるようにしている。


二日続けて同じ服を着たくないというのが理由だが、夕べの彼女は少しばかり香水の匂いが きつかった。

抱き合ったとき、彼女の香りがスーツに移っていた。



俺はタクシーの後部座席で スーツの匂いをかいだ。


ほのかに、彼女の香りがした。


流れる景色を眺めながら、ホテルでの一夜を思い出していた。




余韻を楽しむこの時間が 俺は妙に好きだった。



何のわだかまりも無く、あとくされの無い関係



もう少し一緒にいたいと思うくらいが 丁度いい。



そんな生活を繰り返していた。