レイを抱きながら、倉田奈緒のことを ずっと考えていた。



もう恋などしないと言って、俺のことを見つめた彼女の悲しい瞳が残像のように まぶたに焼きついて消えない。


誰かを愛したいけど、愛せない。


その気持ちが、俺には痛いほど よく分かった。




俺は、今まで何人もの女を抱いてきた。


だが、心の底から誰かを愛したことは一度もない。



人の心など変わりやすいものだ。


俺が変わらなくても、相手が変わるかもしれない。

相手が変わらなくても、俺が変わるかもしれない。


永遠の愛を誓っても嫌いになることはある。

結婚し、

子供をもち、

家庭が出来ができれば、

もう身動きがとれない。


二人の間に愛情がなくなったとき、その先にあるのは悲劇だけだ。


そのことに、俺はいつも怯えていた。


恋愛に対して、臆病になっていた。