「嫌いって、・・・今まで誰かを好きになったことはあるんだろ? その人と愛し合いたいって思ったことはないのかい?」



「愛し合うってなんですか?」



「ん?」



「セックスだけが愛ですか?」

倉田奈緒は周りの客を気にすることもなく そう言いきった。



俺は言葉に詰まった。



「男の人は みんな身体を求めますよね? 稲垣さんも そうでしょ? 私の身体が欲しくて・・・」



すべてを見透かされているようで言葉が出なかった。




愛していれば抱きたくなるもの、そう言おうとして俺は言葉を飲み込んだ。



愛などなくても、俺は女を抱いている。


それは明らかに矛盾していることだ。


倉田奈緒の身体が欲しくて・・・まったくその通りだ。



俺は心の中で自分自身を笑った。