「私の身体に触らないこと」


「?」


「・・・無理でしょ。稲垣さんも」


「触らないって、それってどういう意味?」


「だから、私の身体に指一本触れないってこと」


「手を握るのは?」

「ダメ」


「髪を なでるのも?」

「ダメ」


「抱きしめるのも?」

「ダメ」


「キスも?」

「もちろんダメ」


「セックスは?」

「論外です」



俺は身体を反らせながら、椅子の背もたれに寄りかかった。



・・・無理だ。


それは確かに無理な注文だ。


倉田奈緒は真剣な表情で俺の顔をじっと見つめていた。