綾はソファに腰掛けると、満足そうにタバコを吸った。


「稲垣さんってさぁ、恋人とか作らないんですか?」


「どして?」


「だって すごい不思議」


「恋人ねぇ・・・考えたことないな」


「結婚とかも?」


「ないね」


「稲垣さんのファンって、結構いるんですよ」


「ほー、それは初耳」


「私も、その一人ですけど・・・」



「俺は浮気者だからなぁ。彼女になる人は苦労すると思うよ」



「私じゃ、ダメですかね・・・」



「結婚するなら、真面目な男が一番。俺なんかと一緒になったら、一生後悔するぞ」



「いい奥さんになれると思うんだけどなぁ」


綾は淋しそうに窓の外を眺めた。