寮までは歩いて15分ほどの距離だった。 歩きながら、職場の話をした。 3年前まで法人事業部にいたから、共通する話題は豊富だった。 時折見せる彼女の笑顔は純真な少女のようだ。 だが、話題が恋愛のことになると その表情は曇ってしまう。 そのギャップに違和感を感じながら、俺は寮の前で彼女と別れ 地下鉄の駅へと向かった。 倉田 奈緒 不思議な魅力の女だ。 そのときの俺には、まだ彼女の心の叫びなど聞こえるはずもなかった。