目を覚ますと、窓の向こうに薄色の空が見えた。

壁一面が大きなガラス窓になっている眺めのいい部屋だ。

気がつけば、カーテンは開けたままだった。


もっとも、ホテルの38階なら 誰かに覗かれる心配もないか。


俺はベッドの横のテーブルに手を伸ばし、腕時計を手繰り寄せた。


すると、横で寝ていた女がこちら向きに寝返りをうった。


「・・・何時?」


すこしばかり寝ぼけた声で女はそう聞いた。


「6時過ぎだ」


俺はベッドから起き上がり、椅子にかけておいたシャツを着た。


「どしたの?・・・もう出るの?」


「仕事だ」


「ふーん」


女は もう一回寝返りをうちながら、真っ白なシーツを身体に巻いた。

綺麗に日焼けした肌に巻きついたシーツは足元のほうが尾ヒレのように ねじれながら広がっていて、ベッドの上に横たわる姿が まるで人魚のように見えた。


その姿を眺めながら、俺はネクタイを締めた。