「鈴、おまたせー。」

土曜日は地元の花火大会で、例年通り彩加と2人で浴衣を着て繰り出した。
彩加とは高校が別れたけれど、頭のいい彩加と小林は同じ高校だ。

ちなみに、そこの2人もまだ友達以上から発展できていない。

「お、彩加、鈴ちゃん!今年も結局2人?」

駅前での待ち合わせは、地元の友達との同窓会になりつつある。
高校の新しい友達と来る子もいるが、今年はまだ中学の交友関係が根強い。

「美穂ちゃんと中山君はもう当たり前だね」
「前田さんに彼氏できたのは知らなかった!」

当たり前のようにはじまったカップルウォッチングも、例年通りだ。
卒業と入学で、くっついたり離れたりがあったせいか盛り上がりは例年以上な気もする。

「そういえば!鈴ちゃんに言わなきゃと思ってたんだけどさ、1組の子が陽ちゃんに告ったらしいよ?」

カップルの名前がいくつか出たところで、1人が思い出したように、あ!と叫んだ。
同じ高校に進学した、同じ中学の子。ただ、私自身はあまり仲良しという訳でもない。

周囲がやいやいと盛り上がった瞬間、私と彩加だけが動きが止まった。

「なんかね、中学の頃バスケ部で、見たことあったらしくて。同じクラスだし最近は結構積極的だったみたい」
「3年なって急に身長とか伸び始めたしねー」
「あっ!ほらあそこ!」

言われて騒がしい屋台の方をみると、人混みの中に一瞬だけ姿がみえる。

「えー!付き合ってんのかなあ?」

付き合ってないのに2人でお祭りなんて来たら、どれだけ、目立つかなんて馬鹿でもわかる。


― …付き合ってるんだ。


「じゃあ、私らいくねー」

騒がしかった団体がいなくなって、唖然としている彩加と2人になった。