そして1月の終わり。

3学期の中間テストが終わったその日に、いつものように崎口と点数を競うと呼び止めると、シカトをされてしまった。

なにがなんだかわからなくて、ぐるぐると怖い感情が心に芽生えた。

なにかしただろうか。
嫌われたのだろうか。
私の気持ちがばれて、話したくもなくなったのだろうか。

ぐるぐるとして、ぼんやりと2,3日過ぎたあたりで、それじゃあ納得がいかなくてもう一度崎口を呼び止めた。


「あのさ、もうあんま話しかけんなって」

あえて人の少ない実習教室へつながる階段なんかまで来たかと思えば、開口一番がそれだった。

「なんで?」

ちょっと不機嫌になって、高圧的な態度になってしまった。
少し、天邪鬼な性格をしていたのだ。

「俺と白井が付き合ってるって噂があるんだって。そんなん、白井まずいだろ。好きな奴いんだから」

そう言い難そうに、本当に内緒話のように言われて、思わず盛大に怪訝な声を出してしまった。

「はあ?」
「3組の奴に聞いたし、たぶんこの調子だと学年知ってるかもしれないし」

そんなの前からみんなに言われてたし、むしろ噂の絶頂期は2学期の中ごろで、今なんて落ち着いた方なんだけど。

その天然というか、鈍感ぶり私の中の何かが振り切れた。

開き直った。


「別にいいよ。ていうか、私の好きな人とか、崎口だし」


そんなぶっきらぼうな言い方しかできなかった。
もう一度言うと、天邪鬼な性格をしていたのだ。

「…は?」

いかにも間抜けな顔で、だけどちょっと半笑いで、それから照れてジタジタとしだした崎口に、私はもう恥ずかしさで耐えられなくて、そそくさと1人で教室に戻ったのだ。