背が伸びたのも、体つきがしっかりしてるのも、ネクタイをしてるのも。

見慣れたと思ってたけど、隣で見るとやっぱり緊張する。


でも、それ以上に。


「…だめだ、顔、にやけそう」
「は?」

なんだか真剣な顔をして気を使ってくれたのに、私の口からはそんな言葉が出た。

「彩加にはさ、もう昔のことだし、いいんだよ。みたいな顔してたから…いきなりこんなの、惚気とか言ったらすっごい冷めた目で見られそうじゃない?」

彩加の冷めた目というのが、結構なかなか強烈なのだ。

「あー…いや、でも、向こうも一応付き合いたてだし、お互い様じゃねえの」

ていうか、と、ちょっとため息。

「心臓に悪いわ、白井」

ぱっと手を握られて、繋いで歩き出す。

「なに、急に?」
「白井、背、縮んだ?」
「崎口が伸びたんだよ…私、中2で止まったもん」

あー、という、間延びした声。

「白井、髪伸びたよなー」
「あー、それはそうだね。前はこまめに切ってたけど、伸ばしっぱなしだから」

別にアイロンなんかあてなくてもすとんっと落ちていく黒髪が、今は胸のあたりまである。

「ねえ、崎口」
「なに?」
「聞きいていい?」
「うん」
「髪、短いのと長いのだとどっちがいいとかある?」

片思い中、ずっと気になっていたことのひとつ。
好みに全部合わせたいなんて思ってないけど、近づきたい位は許されるんじゃないかと思う。

だって特に、今日は付き合いたてだし。

とか思っていたら、また脳天にチョップを食らう。

「え、なに、」
「もー、おまえ怖いよ、まじで」
「は?」

心なしか、崎口の顔が赤い。