「彩加と小林がうまくいったの、もう聞いた?」

帰り道。


どうしたことか、唐突に"両思い"が発覚したその帰り道だ。


とりあえず部活に出た崎口を待ち、
学校から離れたところで待ち合わせた。

最寄り駅は一緒だ。
なにせ同じ中学だから。

でも、会話はどうにもうまく繋がらなくて、結局共通でなおかつタイムリーな話題を精一杯探す。


「うん。花火の日、小林が電話してきたから」
「よっぱど嬉しかったんだね、小林…」

そんな当日に報告しちゃうほどか。しかも電話で。
彩加は割りと淡白というか聞かなきゃ言わない子だから、こっちから連絡したのに。

「あ、ていうか。小林には言っていい?どうせ宇野には言うだろ」
「あー…うん。そうだね」

微妙に歯切れが悪くなると、崎口も困った顔をした。

「気になるなら、黙っといてもいいけど」
「あ、違う。彩加も小林も、報告するのは全然平気!」

いや、ある意味平気じゃないけど。

心の中でそう思うと、頭にチョップを食らう。

「え?」
「そうやって隠すから、俺ら変になったんだろうが。なんかあるなら言えば」
「…あ、うん」

待っている間に少しだけ落ち着いた心が、まだ疼きだす。

ねえ、そんなこと、言ってくれるんだ。
あの頃は、どっちかっていうと私の方が精神年齢高い気がしてて、
鈍いな、とか思ってたのに。