「えっと、それは、」
「両思い?」

好きという言葉を簡単に言えるほど、素直にはできない。

だけどきっと、前と同じ失敗を繰り返さないほどには成長しているはずだから。

「うわ、まじで?」

くるりと体を反転させたかと思うと、小さめのガッツポーズが後姿でも見て取れた。
それがおかしてく笑っていると、崎口が振り返って咳払いをした。

「じゃあ、まあ…よろしく」

くるっと振り返って、手の先がすっと包まれる。
手のひらまで届かない、指を掴むような控えめなそれに、心臓が破裂するかと思った。

握り返していいか分からなくて少しだけ指に力を入れると、今度はきちんとつながれる。

「あー携帯。番号とか、アドレス変わってないんだけど、まだ持ってる?ていうか、IDもか」

言われて、昔の手帳とメモをそのまま大事に取ってあるのを正直に言うのもなんだか照れ臭かった。

「今スマホ鞄なんだけど、まだあるなら、帰ったら連絡先メールしといてよ」

なんだか、持っていることを確信しているような言い方だ。
そろっと顔を見上げると、思った以上に優しい顔をしていて思わず顔を伏せた。

「…あとで、送る」

やっぱり恥ずかしくて、思わず繋いだ手に力がこもった。

これは、どうなんだろう。
だめかもしれない!


「だ、だめだ。また勉強手に付かなくなるかも」


そう言った私に、崎口がおかしそうに笑った。