中学にあがって、他の小学校だった彩加(さやか)と仲良くなった。

その席の隣にいたのが、サッカー部の小林で、
小林と仲がよかったのが、私の隣の席だった崎口だった。

似たような性格で、テストの点数だとか身長だとかくだらないことで競い合い、だけど他愛の無い話でいつもしゃべっている私達は、いつの間にかクラスの中では一部にほんのりと噂が立つようになった。


そんな噂の後押しもあってなのか、それとも崎口自身になのか。


冬に入る頃には、まんまと中学に入ってはじめての好きな人が出来ていた。

「なあ、誰な訳?白井の好きな奴って。みんな知ってるとか言うんだけど」
「知らない。言わない。っていうか、みんなって誰に聞いたわけ?」

二学期は彩加の通路を挟んで隣に崎口の席がきていて、私は良く彩加の席に遊びに行った。

誰からもれたのか、私に好きな人がいると分かったときからずっとこの調子なのだ。

「俺に言えないってことは、俺の仲いい奴?」
「なんで崎口はそんなに鈴(すず)の好きな人知りたいわけ?」
「ちょっと彩加!」

思わず彩加を止めに入るけれど、崎口は真顔で、

「だって小林とかもみんな知ってるとか言うんだぜ?俺割と白井としゃべんのに全然わかんねえ」

と、ただ除け者感が嫌だという理由を語ってみせた。


その言葉に私は安心したようなちょっとがっかりしたような気持ちになりながら、そんな生温い関係を年明けまで持ち越した。