「強引すぎじゃね?そんなことしたら、うまくいくもんもいかなくなるって」

ありがとう、とスマホを返すとため息をつかれた。

「あそこまできちゃうと、お膳立てでもしないとずっとあのままな気がして。まあ、小林なら泣かしはしないでしょ」
「ていうか、これこらどうすんの?」
「1人になっちゃったし、帰るよ。ごめん、助かっちゃった」

すっかり引き止めてしまい、もう一度頭を下げる。

「早く戻んないと、花火までに合流できなくなるよ」

せめて見送ろうと動くのを待っていると、遠くに見たことのある浴衣の子がキョロキョロとしている。

「ほら、早く行ってあげたら?探してるみたいだけど」

そう言ってその子の方を示すと、不思議そうに首を傾げた。

「…一緒に来てる子でしょ?」
「なんで知ってんの」

それは先ほど聞いたからです。
とは、言えないけど。

「さっき一緒に歩いてるとこ見たから。みんな待ち合わせで結構中学の子達も来てたよ」

しまったという崎口の表示に、胸が痛む。

彼女ができたなんて知れたら、きっとまた私の名前が出てしまう。

そういや昔、白井と付き合ってたよな

とか、あんな短い付き合いを彼女に知られるのは嫌だろう。


「だ、大丈夫!」

気がついたら、叫んでいた。

「何か言われたら、周りが騒いでただけで何も無かったって、ちゃんと説明するし。知ってる人には口止めしておくから!」
「は?」
「ごめんね、本当に。今日も…なんか、色々」

崎口を探しているあの子が、あさってな方向へ行ってしまう。
それを見て、私は崎口を無理やり方向転換させてぐいぐいと背中を押す。

「じゃあね」


歩きにくい下駄を一生懸命つっかけて、私は小走りで家に帰った。