「ナツミ、明日には退院出来るみたいだよ。良かったね」
「本当?良かった!」
優しく笑いながらそう言う父親に私はまた笑って答えた。
ちっとも嬉しいだなんて思わないけど。でも私は笑う。
そうしたらお母さんとお父さんが安心した顔をするから。
一度だけ何もかもが不安になって泣いたことがある。
その時とても悲しそうな顔をさせてしまった。
その顔は今でも覚えてる。もうそんな顔をさせたくない。見たくない。
だから私は笑う。
お母さんとお父さんと話しながらちらりと視線を窓の外に向けた。
風に舞う桜の花びらを見て何だか私は無性に泣きたくなった。
──ねぇ、私は一体なんなの?