ホログラム

私が唯一残している小説は、あれしかなかった。故にKに見せるならそれしかないんだけれど、二年も前に書いた小説だから、今の私にはとてもじゃないけど人に見せられるようなものじゃなかったの。


「ま、待って。私のは、人に見せられるようなものじゃな……」


「俺は写真を見せるのに?」


「うっ……」


「どうしても、ダメか?」


「は、恥ずかしいから、書き直しの期間をちょうだい!」


「どのくらい?」


「2、週間……ぐらい」


「分かった。二週間後に、お互いに持ってこよう」


慌てた私は、Kとそう交渉して、その日は早めに帰ったわ。


親への帰宅の挨拶もそれなりに、私はご飯はいらないと母に伝えて、あのノートを開いた。


改めて読み返した私の処女作は、一言でいうと「黒歴史」よ。表現は陳腐だし、キャラクターも設定もまるで不安定。恥ずかしいったらありゃしない。


「黒歴史」をKに読んでもらえるほどにするには相当苦労するなと直感しながら、また私の世界を作ることができることに少なからず喜びを感じている自分がいることに気が付いた。


私、やっぱり小説が好き。書きたい。


それに改めて気付かせてくれたKは、もっと、もっと好き……なのかもしれないな。


その日、私は照れくさいながらもKへの想いを確信した。