私が自分の住んでいる町名を口にしても小澤くんは大して驚いた様子も見せなかった。

「それは近いね」

私の住んでいた場所を知っていた様子はなかったが、全く感情の動きを見せることのない小澤くんに、男の子ってみんなこんな感じなんだろうか? と不思議な気持ちになった。

それとも小澤くんは特別な性格なんだろうか?

男の子の友達がいない私には判断できなかった。

「小澤くん」

重くのしかかる沈黙に耐えられなくなって口を開いたのは私だった。

「何?」

「どうしてあんな時間まで学校にいたの?」

確か小澤くんも部活には入ってなかったはずだ。

それがどうしてあの時間に校内に残っていたのだろう?

おかげで私は助かったのだが、ほんの少し気になった。

「風紀委員会の集まりがあったんだ。毎月第二週の火曜日にあるんだけど、これが厄介でさ」

本当に嫌そうに口にした小澤くんの声には、今まで聞いたことがなかった感情の沈みを感じる事ができた。

もし私が小澤くんだったら、その言葉の後『風紀委員になんてなるんじゃなかったよ』と続けるだろうと思った。

しかし、本物の優等生である小澤くんは そんなことは口にしない。