「そっか……。半年前にもこんな事あったよね? 変な感じ」

小澤くんの他意もなく洩らした一言に私は動揺した。

まるで自分の企みを見透かされてしまったような気がして。

「うん」

声が上ずっている。

心の動揺がそのまま表に出たような甲高い声に自分の事ながら嫌になった。

小澤くんも私の様子がおかしいのに気付いたらしく、不思議そうな表情を浮かべた。

勇気を出して!

自分を奮い立たせるように息を整え、小澤くんを見据える。

「小澤くん! 途中まで一緒に帰ってくれる?」

不自然なほど大きくなってしまった声もこの際、目をつぶってもらおう。

私は小澤くんの返事を追い詰められたような気持ちで待った。

断られたらどうしよう。

返事までに一瞬の間があった。

時間にして数秒の事だろうけど、私には何時間も経ったように思えた。

「……いいけど」

差し出された傘の下に一歩踏み出しながら私は小澤くんも並んだ。

私は恋をしている。

隣にいるこの人に。

まるでそんな私の気持ちを応援するかのように雨は激しさを増した。


おわり