(冬華side)

「シャンパンはいりまーす!」

タバコの匂いと、お酒の匂い。

私がこんなところに来るようになるなんて、
高校生のときは想像もしていなかった。

「冬華、今日もありがとね。」

この呼び捨てで読んでくる相手は
歌舞伎町ナンバーワンホストの
時宗 風夏汰(トキムネ カナタ)。

「いいの。今日はちょっと会社で嫌なことがあったから…」

私(白石 冬華《シライシ トウカ》)は、
飲めないお酒を一気に飲みながら日々のストレスをホストに通い発散していた。


「ありがとうございました!!」

今日はちょっと飲みすぎたかもしれない。

そう思いながらもフラフラになった重い足を必死に動かしながら歩く。

好きじゃないお酒を飲んで、
別に自分に気があるわけでもない男の人達にチヤホヤされてお金を貢ぐ。

こんな生活がいつまで続くのか、
考えただけで気分が沈む。

「…うっ、…ヒック…。」

こうして、泣きながら帰るのもいつもの日課になっていた。

しかし、変だな…。
泣いているせいか、飲みすぎたせいか、
視界がぼやけて頭がくらくらしてきた。

(…やばい。…このままじゃ道のど真ん中で倒れちゃう…。)

そんなことを思ったのもつかの間。
私の目の前は真っ暗になり、勢いよくコンクリートの道に倒れこんだ。

そして、意識が朦朧(モウロウ)とするなかで
私の耳に微かに聞こえたのは、
慌てたような男の人の声だった。

「……ぶ…すか…、……大丈夫ですか!?」

そこで私の記憶は途切れた。