「……ずっ…」
治まった涙の痕を外気にさらしながら、バス停までの道のりを歩いていく。
「バス、何時だったかな……」
手に持ったスマホの画面を操作して、1人で呟いた。
「お店がいっぱい……賑わってるなぁ」
日が落ちていく景色の中で、夕飯の買い物らしき主婦や親子の姿が仲睦まじい様子で通り過ぎる。
「おかーさん!今日のご飯はなぁに?」
「そうねぇ〜。今日はハンバーグにしましょうか!」
「ハンバーグっ?やったぁ!ハンバーグ大好きっ!」
「ふふっ……仲良いなぁ」
手を繋いで歩いていく親子に癒されていると、後ろから誰かに服の裾を引っ張られた。
「……?」
振り返れば、眼下には可愛らしい女の子の姿。
「おねぇちゃん!おめめ、どーしたのっ?」
「え…?」
「おめめ!パンダさんになってるよ?」
女の子はそう言うと、肩から下げていた小さなカバンからハートの手鏡を出してこっちに向けれくれる。
私はお礼を言ってから、その場にしゃがんで鏡を覗き見た。
「うわっ、本当にパンダみたい……」
病院でさんざん泣いた自分の目の周りはパンパンに腫れていて、誰から見ても泣いた痕だとわかるものだった。



