私は目尻に溜まったしずくを拭ってから、猫背になった彼を見る。
「……それじゃ、またね」
「……うん」
「……………」
出ていかないといけない。
でも、次はいつ会えるかわからない。
和哉くんの1番辛い時に、私はそばにいることさえできない。
それなのに、今こんな風に別れてしまうの?
私は和哉くんの彼女なのに……こんなのって、彼女とは言わないよ。
「和哉くん」
「っ!、え……」
ビクッと、彼の肩が揺れた。
冷たくなった彼の温度が、私の手のひらに伝わってくる。
ベッドに置かれた彼の手は、重ねた私の体温を奪っていった。
「…………」
驚いたような彼の顔が、静かに私を見上げる。
「……うん、あったまったかな。へへっ、和哉くんの手、冷たいね」
「風結……」
「私ね、中間テストで48位だったの。すごいでしょ?
だから和哉くんに会ったら、頑張ったご褒美に手を繋ぎたいなって思ってたの。
…叶ってよかった」
「…………」
「……じゃあ、本当にまたね」
「………うん」
そっと離した自分の手が、寂しさを覚える。
まるで冷たかった彼の手に、温かさがあったかのように。
「っ、」
熱くなる目頭を抑えて、私は病室のドアに手をかけた。



