手術をしても、歩けるかわからない。
成功したとしても、高校最後の舞台に挑めるかどうか。
そんななんの保証もない未来のために今の自分の全てをかける意味が、ない。
「…………怖い」
「……!!」
震える声で放たれたその一言に、彼の気持ちが痛いくらいに伝わってくる。
先が見えない未来が、怖い。
頑張って、頑張って、頑張っても、
それが報われるかは、わからない。
報われなかった時に、自分がどうなってしまうのかが怖い。
「…ぅ……っ、」
泣いていいのは、私じゃない。
けれど、溢れ出る涙を止めることが、今の私にはできなかった。
「っ………はは、ごめん。取り乱しちゃったね」
そう言った彼の顔が、取り繕った笑顔で苦しい気持ちをしまい込む。
「…っ」
私はただ、首を振った。
ただ何度も、首を振った。
止まらない涙の代わりに、
出てこない言葉の代わりに、
「そんな苦しそうな笑顔をしないで」と、
ただそれだけを伝えようと首を振った。
「……っ…」
伝わったのかは、わからない。
けれど一瞬歪んだ彼の笑顔は、そのまま下に向けられた。
「………帰って」
「え……」
「ごめん。今は……風結の顔が見れない」
彼の顔は、下を向いたまま。
「…………わかった。急に来て、ごめんね」



