初恋のクローバー



我慢できる痛みだった。


違和感を感じつつも、自然に治るだろうと思っていた。


「バカだな、俺……」


『すぐに入院していただいて……手術をしてもリハビリに半年はかかりますね』


「半年……」


復帰できたとしても、3年のインターハイに万全の状態で挑めるかどうか。


「っ……」


後悔の念に、駆られていく。


「自業自得……」


自分の体調の管理もできなくてこんなことになるなんて……カッコ悪い。


こんなこと、カッコ悪すぎて風結には絶対に言えない。


俺の走りを、憧れだと言ってくれた。
俺の走りを、理想だと言ってくれた。


『ずっと和哉くんみたいに走りたいと思ってた。だから和哉くんが走ってるところを見ると、すっごく嬉しくなるんだ』


本当に嬉しそうな声でそういった彼女に、
「自分が原因で走ることができなくなるかもしれない」なんて、どんな顔をして言えっていうんだ。


もしかしたら、嫌われてしまうかもしれない。


自己管理もできない俺に、呆れられてしまうかもしれない。


「いや、もう嫌われてるか……」


マナーモードにしたスマホは、彼女からの着信を何度も知らせていた。


その度に出ようと思って伸ばした手は、自分のスマホを掴むことはなかった。