「…………」
少し肌寒くなってきたこの頃。
閉まった窓の向こう側では、冷たさを帯びた風が木々を揺らしている。
「風結……」
ベッドに寝転がったまま、しばらく聞いていない彼女の声を思い出す。
もう、3週間くらいになるかな……。
最後に電話をしたのは、会おうと約束をしたあの日。
「中間テストで50位以内に入れたら会おう、って約束したのに……俺が守れなかったな」
風結と付き合い始めたあの新人戦のあとから、違和感はあった。
たまに足の裏の真ん中辺りに、一瞬だけ突き刺すような痛みが走った。
けれど毎日痛むわけではないし、テーピングやアイシングをしていれば治るだろうと思っていた。
でも、風結と約束をしたあの日。
電話の途中で、今までよりも強い痛みが足を襲った。
それも一瞬だったから風結にはごまかせたけれど、その日から少しずつ痛みが増すようになった。
次第に何度も訪れる強い痛み。
最後には立とうと足を床につくだけで、耐えられなくなった。
『足底筋膜炎ですね。もっと早くから気づいて治療をしていれば治ったのですが……ここまでになると、あとは手術しか方法は残されていません。
ただ、手術をしてもまた陸上ができるかどうかは……わかりかねます』
「足底筋膜炎……」
医者に言われた病名は、聞き覚えのないものだった。



