初恋のクローバー



『すぐに治療してれば、大丈夫だった。
でもあいつはテーピングとかアイシングで痛みを和らげてたから、我慢ができてたんだ。

我慢し続けて立てなくなって……今の和哉にはもう、手術しか治す方法がない』


『手術……』


手術……手術……。


受け止められないその単語を、心の中で繰り返していく。


そしてふと、ガクくんの最初の言葉を思い出した。


『和哉くんがもう走れないかもしれない、って……手術をすれば、治るんじゃないの?』


『……足底筋膜炎の手術は、入院とリハビリ期間で半年以上かかる。和哉が部活に復帰できるのは、最低でも3年の夏だ』


『3年の夏……』


インターハイの前……。


『でもその手術をしても、また走れるかはわからないらしい』


『え……?』


『最悪の場合、和哉は走れなくなる』


『……っ』


あんなに走ることが好きな人が、
あんなに才能に溢れた人が、
もう走ることができないかもしれない。


つらかったはず。
自分の1番好きなことができなくなる。
きっと、とても不安なはず。


私はずっと、そんな和哉くんのつらさや不安に気づいてあげられなかった。


やるせない気持ちで、いっぱいになる。


『……和哉に、会いに行ってくれないか』


『っ……うん。会いに行くよ』


『ありがとう────』