初恋のクローバー



和哉くんに電話が繋がらないから来た、って言ったら引かれるかな……。


「……もしかして、和哉のこと?」


「っ!う、うん……」


心の中を見透かされたかのように向けられた疑問に、私はえへへと苦笑いを浮かべながら答える。


「実は、和哉くんと3週間くらい電話が繋がらなくて……心配になって来ちゃったんだ」


「!……あいつ、言ってないのかよ」


「え?」


ボソッと呟かれたガクくんの声は私に届かなくて、反射的に聞き返してしまう。


「……本人が隠してることを俺から言うのも気が引けるけど、ここまで来てくれたあんたに何も教えないのは違うと思う」


「……?」


本人が隠してる……?


意味がわからなくてガクくんのことを見上げれば、彼は真剣な顔つきで言った。


「和哉は今、病院にいる」


「……え?」


瞬間、嫌な考えが頭をよぎる。


和哉くんが、病院に……。


もしかして、電話をしないんじゃなくて、できなかった……?


「っ、」


「あ、いや、事故にあったとかではないから」


「あ、そ、そうなの……」


一抹の不安を否定されて私はホッと息をつく。


「ただ……」


「?」


「……っ、」


「……言って。和哉くんのことが知りたいの」


言いづらそうに顔を歪めるガクくんに、私は新たな不安を抱きながら彼の瞳を見つめる。


ガクくんはしばらく顔を背けると、まっすぐに私を見つめ返して言った。


「和哉はもう、走れないかもしれない────」