「男子800メートル凄かったよね!!」
「1位の人知らなかったんだけど有名なの?」
「前のインハイで予選落ちしてた人じゃない?」
「すっごい速かった!名前なんだっけ?」
「廣谷和哉だよっ!」
周りの熱が、興奮が、私の気分を高揚させる。
「……ふふっ」
こみ上げてくる嬉しさを隠せないまま、私は人混みの中を早々と進んでいた。
どこにいるのかな?
電話した方が早いかも……
「────風結っ!」
カバンからスマホを取り出そうとしていれば、後ろから声が届いた。
慌てて振り返れば、そこには探していた彼の姿。
「和哉くんっ!」
視界に彼を捉えただけで、鼓動が走ったあとみたいに高鳴った。
さっきわかった、自分の気持ち。
自然と呟いていたあの言葉を思い出すだけで、頬が熱を帯びてくる。
『………好き』
「っ、」
「風結?大丈夫?」
「あ、うんっ!大丈夫だよっ」
気づけば目の前まで迫っていた彼に、私は自分の頬を押さえながら慌てて返事をした。



