「……ごめん、和哉くん。私、和哉くんに嘘ついてた」


「え…?」


「私、本当は中学生の時に陸上部に入ってたの。そのお守りは、その時に私が陸上の試合に勝てますようにっておばあちゃんが作ってくれたものなんだ」


「やっぱり……」


「えっ?」


「あっ、ううん。なんでもない」


「?……私ね、自分で言うのも変だけど中学の時は結構凄かったんだぁ。大会では毎回上位に入ってて、全国にだって行ったこともあったの。

……でも高校に入ったら、タイムが縮まらなくなった」


「…………」


「まだ1年だから高校の陸上に慣れてないだけなんだ……いつか先輩たちみたいにまた速く走れるようになるんだ、って……思ってた。

結局、私は自分が周りに劣ったことを認めたくなかっただけだったの。……でも、1年の終わりになって気づいた。

私はもう、速く走ることはできないんだ、って……」


ほんと、私ってダメ人間だなぁ……。


口に出してしまえば自分の情けなさがはっきりとわかって、思わず自嘲の笑みをこぼしてしまう。


和哉くんも呆れてるんじゃないかな、なんて考えていると、それまで黙っていた彼がゆっくりと口を開いた。


「速く走ることができなくなったから、陸上をやめたの…?」


「……そうだよ。あの時の私は、周りに置いていかれる自分が恥ずかしくていつも焦ってた。みんなより練習してるのに、速く走れない……いつしか私は、走ることが嫌になってた。

2年になったら、新しく1年生が入部してくる。そしたら後輩にも置いていかれるんじゃないか、って思って苦しくなって……私は部をやめたの」


「…………」


「1人でも頑張り続けた和哉くんとは違う……私は途中で諦めちゃった。……陸上から、逃げちゃったんだ」