とりあえずこの辺は一通り見たので次はこの棚の裏側に回ろう、そう思いそちらへ向かおうとしたが、そこに何か気配を感じた俺は無意識に足を止め、棚の陰に少し身を隠した。

そして、気になって覗いてみる。







「ぇっ…」





何度も、自分の目を疑った。
何度も、何度も。



俺は、幻を見てるんだろうか。



動揺した体はその場に固定されたまま動かない。
整理のつかない頭はショート寸前。
呆然としだした俺は、目の前の変化に気づかなかった。



「あ、いた。やっぱここだったか。」



名前を呼ばれ、肩に触れるものを感じて我に返る。
俺の視線の先には・・・・・、もう何もなかった。


ああ、ぼーっとしてたからだ。



「おーーい。なに、また本探してんの?」
「え、ああ、うん、そう。」
「ほんと読書好きだなーナツは。」



肩に感じたのは一夜の手の重みで、どうやら俺を探していたらしく一緒に帰るつもりらしい。



「じゃあ行こっか。」
「はっ?本は?」
「あ、そっか。」
「え、なんだそれ、ボケ?ナツが?」
「いやいや、別にボケではないから」