駅まで来ると、俺たちはそれぞれ違う路線で帰路に就く。
互いに「じゃあ」と一言交わしてすぐ、一夜が俺を振り返って言った。



「月曜にはちゃんと戻ってろよ!」



別にどこにも行かないよ、と言おうとしてやっぱりやめた。
"いつもの俺に"、そういう意味なんだろうと思ったから。

俺は「うん」とだけ言って、また自分の帰路に向き直った。




家からの最寄りの駅に着くまで、電車に揺られながらあの日の事をずっと考える。



あの日は午前中が始業式で午後はホームルームをして解散だったので、冬休みに借りていた本を返そうと思い放課後は図書室に行った。
カウンターの返却ボックスに本を返して、空き時間に読めたら、とついでにもう一冊借りることにし棚の方に向かう。


借りるのは専ら小説で、エッセイや評論などはごくまれにしか借りることは無い。
ジャンルは特に問わないが、文庫本ではなく四六判が好きだ。
棚に並ぶカラフルな背表紙を目にするとつい見とれてしまう。

何を読むかを決める基準は特にあるわけじゃないけど、なんとなく惹かれるタイトルや表紙を見つけたらそれを手に取ったり、なんとなくその日の気分で背表紙の色合いを見て選ぶ、そんな感じ。

そうやって、その日も俺は本棚を物色していた。