自分の意志に反してぱたぱたと落ちていく涙を隠そうと必死に下を向いていると、突然視界がネイビーに覆われた。
「……うぇっ?」
「ん、」
疑問に思う私をよそに、男の子はネイビーの何かを私に無理やり持たせる。
ふわふわの手触りのそれは、何かと思えばタオル生地のハンカチだった。
えっと……これは。
使えよ、ってことかな。
いいのかな。
それ以上何も言わない彼に、ためらいながらもありがたく使わせていただくことにした。
柔らかいハンカチで顔を覆えば、シトラスの香りが漂って。
その香りに包まれながらしばらく涙を拭っているうちに心が落ち着いてきた。
涙もぴたりと止まって穏やかな気持ちで顔を上げると、彼は安心したようにほっと息をついた。
「……じゃあ、俺はここで」
「あ、えと……これ……」
「それ、あんたにやる」
私が手にしているハンカチを顎でくいっと指して言う。
たしかにそれは、私の涙と鼻水でぐしゃぐしゃで返そうにも返せないから、その方がありがたいけれど。
いいのかな……と思いつつも、彼が微動だにしないから、お言葉に甘えて鞄の中にしまった。



