「小春が教えてくれたんだよ」


この前桜庭さんの家にお邪魔したときに、と言った砂川くんの言葉に。

そういうことだったのか、と腑に落ちた。



でも、あの日からもう数週間経っているのに。

ちゃんと覚えてくれていて、祝ってくれたんだ……と嬉しさでいっぱいになる。



それと同時に、いつの間にかちゃっかり下の名前で呼ばれている小春のことを羨ましくも思ったり……なんてね。




ちょうどそのタイミングで最終下校のチャイムが鳴り響いた。

砂川くんとふたり、図書室を出て鍵をかける。




「じゃ、また」


「うん。あっ、これ本当にありがとう!」




クッキーの入った袋を示しながら砂川くんにそう言えば、砂川くんはちょっと口角を上げて、それから背を向けて昇降口の方に向かって行った。


私はその場で暫く、遠ざかっていく砂川くんの背中を見つめていた。