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図書室に入ると、いつも通り既に砂川くんがカウンターに座っていた。


軽く挨拶してから仕事に取りかかる。


……といっても、ある程度の返却作業が終わったら本棚の整理をして、それも終えてしまえば、あとは最終下校のチャイムを待つのみだ。



その暇を利用して、提出課題を進めたりもするんだけど今日はあいにくそれさえも無くて。


暇を持て余した私はただただぼんやりと宙を見つめていた。




ふと気づいて時計を確認すれば、もう残り5分。

図書室に自習しに来ていた生徒もひとり残らず居なくなっていて、この場には私と砂川くんのふたりだけ。



私もそろそろ荷物をまとめようかな、と立ち上がった。


すると。




「……っ、桜庭さん」



ぱしっと私の手首を掴んだのは紛れもなく砂川くんで。


だって、この部屋には私の他には砂川くんしかいないわけで。



……だけど、どうして。


どうして手首を捕まえられているのか、その理由がわからない。