一層強くなった力に抗えるほどの余力なんて残っていない。
地につけた足はずるずると引きずられ、我慢比べはあっさりと私の負けに終わる。
─────もう無理。
いいよ、私なんか、どうなったって。
もう無理だと気づいた瞬間、急に投げやりな気持ちになって、ぎゅっと瞼を閉じた。
どうにでもなれ、と流れに身を任せそうになった、そのときだった。
「─────ッ、痛い痛いイタイッ!!」
痕になりそうなほど強く掴まれていたのが嘘だったかのように、ふわりと手首が解放されて。
ほっとしたと同時に何事かと思えば、
私を追いつめていたはずの男の人から間抜けな悲鳴が上がった。
いったい何が起こったの、と疑問に思ったのは一瞬。
「……こんなとこで何してんの、おっさん?」
だってその声が聞こえたとき、
ほんとうにヒーローなんじゃないかって思ったんだ。



