ふと心のなかで呟いた彼の名前に、どきりと心臓が跳ねる。
どきどきしたり、不安になったり、浮かれたり。
砂川くんといると、私の気持ちはいつも忙しい。
私にとって、砂川くんってどういう存在なんだろう。
知り合い、よりかはもうちょっと近いと思うし、友達と呼ぶにはまだ遠い気がする。
んん……と考え込んでいると、誰かが私の名前を呼んだ。
「桜庭さん?」
「っ、砂川くん……!」
それは誰か、なんかじゃなくて砂川くんで。
「待たせた?」
こてん、と首を傾げた砂川くんに、首を横に振ってみせる。
「ううん、大丈夫」
私が早く着きすぎちゃっただけだし、もともと新校舎より旧校舎のほうが昇降口に近いからね。
「とりあえず葵依のこと迎えに行って、そのあとは適当に公園とかで……って思ってるんだけど」
砂川くんの言葉にこくりと頷いた。
「じゃ、行くか」
その砂川くんの言葉を合図に、並んで保育園への道を歩きはじめた。



