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チャイムが鳴り終わる前に教室を飛び出したのなんて、はじめてかもしれない。



その証拠に、教室を出る直前、榎木さんたちの珍しいものを見るような視線がぐさぐさと刺さってきた。



放課後のはじまりのチャイムの余韻を背に昇降口への階段を駆け下りて。



息を整えながら少し目を伏せる。





「浮かれすぎかな……」





委員会の当番じゃなくて放課後に会えるってことが、たとえそれが葵依ちゃんにお願いされたからという理由でも、私のなかでは大きくて。



昼休みのあとの授業なんて、砂川くんのことばかり頭のなかをちらついて、全然集中できなかった。



それは、私が単にこうやって放課後にだれかと待ち合わせすることや、男の子と一緒に過ごすことに慣れていないからなのかな。





────それとも、その相手が砂川くんだから?