「私でいいなら、ぜひ」
肯定の返事を返せば、砂川くんの表情が少し柔らかくなった気がした。
「よかった。ありがとう」
そのタイミングで、昼休みが終わる5分前の予鈴が鳴り始める。
もう、教室に戻らなければならない時間。
「じゃ、放課後昇降口で」
「うん、またね」
どちらともなく図書室を後にする。
図書室を出た先は新校舎と旧校舎で向かう方向が違う。
砂川くんと別れて、ひとり廊下を歩きながら。
……誰かと放課後の約束があるなんていつぶりだろう。
葵依ちゃんに会えるのは楽しみで、放課後の楽しみが増えたことがとっても嬉しくて。
……なのに。
『あのさ、よかったら葵依と会ってやって欲しいんだ』
そう言われた瞬間、少し落胆してしまったのはどうしてだろう。
……そんなことを思うなんて、私はなにを期待していたのだろうか。
その答えは見つからないまま教室にたどり着いて、席についたのだった。