「桜庭さん」



砂川くんが口を開いて、私の名前を紡ぐ。



「今日の放課後、空いてる?」


「へっ……!?」




あまりに前触れもなく、突然のことで
変な声が出てしまった。


今日の放課後、空いてる?……って。




「えっと、特に予定はないよ」




戸惑いつつもそう答える。

だけど、どうして?



そんな私の疑問はすぐに解決した。




「あのさ、よかったら葵依と会ってやって欲しいんだ」

「葵依ちゃんと?」


「そう。葵依が桜庭さんのこと……すごく、気に入ってて。会いたいってずっと言ってるんだけど」




砂川くんの妹の葵依ちゃんに会ったのは、
はじめに会った一度きり。


そのたった一度きりで、また会いたいと思ってくれるなんて。


純粋に嬉しくて、頬が緩んだ。