「ふっ……くく……っ」
肩を震わせて笑い続ける彼に戸惑いを隠せずにいると、砂川くんが口を開いた。
「あんたって、ほんと純粋なんだな」
「え?」
「これくらいのことでこんなに褒めてくれたの、桜庭さんが初めて」
「えっと……」
「褒めてるんだけど。一応」
あんまり笑いながら言うものだから、全然褒められてる気がしない。
でも、砂川くんの笑顔が見られたのは素直に嬉しくて。
複雑な気持ちでいると、ふと鞄の中のあるものの存在を思い出した。
「そうだ、これ」
鞄のポケットから取り出した “あるもの” の正体は、ネイビーのタオル生地のハンカチ。
「ずっと、砂川くんに返さなきゃって思ってたの」
あの日から借りっぱなしだったハンカチを砂川くんに差し出す。
それを見た砂川くんは目を丸くした。
そして、時間差でまた吹き出すように笑いはじめる。
……今日の砂川くんは、よく笑うなあ。
「やっぱりあれ、桜庭さんだったんだ」
「あ……、うん」