触れたい、と衝動的に手を伸ばしかけて

それとは対照的にはたらいた頭の片隅に残った僅かな理性が必死にその手を抑制した。



薄くため息をついて、心の中では軽く舌打ちしてしまう。



榎木と仲良くなってから、その影響だろうか。桜庭さんは最近ますます可愛くなった。




別に、中学の頃からの付き合いで、榎木が根本的にいいヤツだってことはわかっている。

桜庭さんだって最近楽しそうだし、それを咎めるつもりはさらさらない、けれど。




目を惹きつけるような可愛い格好して、他のいろんな奴の目に触れたと思うだけで。



少々複雑な気持ちになってしまうのには、抗えない。




ここのところ、自分の心の狭さを自覚しては呆れるばかりで。

桜庭さんが絡むと、普段 “大人びている” と称されているのが嘘みたいに必死だし、余裕なんか1ミリもないし、格好悪くて情けない。



そのくせ、桜庭さんがそうやって頑張ってくれるのが俺のためなんだって思うと、それは素直に嬉しいし、矛盾だらけの感情は、もう自分の手には負えなくなっている。



持て余した感情を彷徨わせていると、桜庭さんが不思議そうに小首を傾げた。