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沈みかけた夕日が差し込む図書室。

オレンジというより、最早茜色のひかりに染められた部屋の中でひとり、佇んでいた。


ぼんやりとした思考回路の中で、なんとなく彼女と出逢った春の日のことを回想して。



─────思い返せば、俺は最初から……。





ガチャ、と扉が開く音に散らばりかけていた意識を戻して回想を一旦中断した。

思わず口許が緩んだあたり、俺は結構単純なのかもしれない。




「砂川くん……っ、ごめん、待った?」

「全然」



ここまで慌てて走ってきたのか、少し乱れた前髪を手ぐしで整えつつ、息を落ち着けながら 駆け寄ってくる彼女─────桜庭さん。



いつもよりふわふわさせた髪を、珍しく低い位置でツインテールにしていて、走ってきたからなのか、はたまたチークなのか───で桜色にほんのり染まった頬、それからうるうるに濡れた唇はグロスだろうか。



女の子のメイク事情はよくわからない、けれど、そんな姿で上目づかいに至近距離で見つめられたら……。



ごくり、と唾を呑み込んだ。

なんていうか、普通に……やばい。