そういえばあのときも随分小春を待たせてしまっていたなあ、なんて懐かしく思い返したりもしてみるけれど、



全部、小春の入園と同時に私が高校に入学した、ほんの一ヶ月前からのことなんだよね。






「……早いなあ」





──── “高校生になったら、何かが変わるかもしれない”



そんな甘い期待はとうに打ち砕かれて、ぼうっとしている間にも日々は過ぎていく。




ついこの前入学したばかりなのに、もう5月だなんて。



早いよ。



この調子じゃ、きっと、
気がついた頃には高校生活が終わってしまう。


そんなの、駄目。



だって、それじゃあ私は何も─────……








そんなことを考えながら、人通りの少ない路地裏をぼんやりと歩いていた。そして、ぼんやりしていたのがきっと良くなかったのだろう。






「ねえ」


「……」



「おーい、そこのお嬢さん」



「……」



「ちょっと、無視しないでくれるかな?」


「……っ!?」



背後からガシッと強引に肩を掴まれて、驚きながら振り向くと。