もしかすると、俺は期待していたのかもしれない。


小学生や中学生にとって “高校生” というのは、ずっと大人びて見えて、憧れの存在だったから。



漠然と、もっときらきらと輝きを放つなにかが始まるのだと思い描いていたのだろうか。





理想と現実の違いに落胆しているのか、と妙に納得して自嘲気味に笑った。


俺は “きらきら” したものを追い求めるようなタチなんかじゃないくせに。





衝動に突き動かされて行動したことなんて、今まで一度もなかった。



いつだって、心のどこかに冷静な自分がいて合理的な解決策を模索している。





大人びている、といえば聞こえはいいものの 実際のところはそんな良いものじゃない。





本当は、もっと─────……





無意識に空を見上げて、その青の眩しさに目を細めた。

不自然にひとつだけ、浮いている雲は掴めそうなほど近くに感じたけれど。





─────まあ、掴めるわけないか。




そう、心の中で呟いたとき。






「や……っ」





耳に飛び込んできたのは、微かな甲高い声。

まるで、絞り出したかのような───悲鳴、で。