「……っ」


『大事なことは、言葉で伝えなきゃ』




由良ちゃんの切実な声にはっとした。

そうだ……私。




私は、思い上がっていたのかもしれない。

砂川くんがいつも、欲しい時にほしい言葉をくれて、すくい上げてくれるから。


言わなくたって、わかってくれる……なんて、そんなはずないのに。




だって、私はまだ大事なことをなにひとつ伝えていない。


出逢ったときから、ちょっとずつ降り積もった感謝の気持ちのありがとうも。

いつのまにかこんなに膨らんでいた、好きだという気持ちも。



ちゃんと伝えなきゃ何もはじまらない。

いちばん伝えたい気持ちは、ちゃんと言葉にしなきゃ伝わらない。



素直になるのが下手くそな私だけど、いい加減素直にならなくちゃ。




「由良ちゃん、ありがとう」

『別に、私はなにもしてない』


「でも、ありがとう」



ありがとうって思ったら、思ったときに伝えなきゃだめなんだ。


そんな私の気持ちを汲んでくれたのか。



『うん』




最後に由良ちゃんは優しく頷いて、ぷつりと電話が切れた。